>
Homepage



MTV commercial うはは。

おや。誰だ。

キャット・ウーマン?

やべ。上司。

ヘッドホーンはずそう。

あーあ。


MTV コマーシャル 撮影日誌


MTV だ。インターネットから応募したコマーシャルに出演が決まった。ハンブルグは我
が村からの乗り換えを考えると6時間近くかかる。まあ、仕方がない。バジェットも限ら
れたインターネットCD販売の小さなレーベルのための広告だから仕方がない。広告とな
ると普通はペイも良く、ハンブルグ辺りだったらフライトで行けるんじゃないかな。

ハンブルグのマクドナルドで待ち合わせだ。一時間程すると女性が現れた。彼女のマン
ションにバスで行く。彼女はプロデューサーで彼氏と始めたレーベルの話をしてくれた
。これから大きく売り出そうとしているらしい。大人向けのサウンドを揃えた、クールな
レーベルが目標らしい。彼氏は経済学を大学で専攻していたらしいが、DJが趣味でいまだ
に周一クラブで鳴らし続けているらしい。ターゲットは20代と30代。

彼女はエキストラ等と連絡を取っている。監督のモリッツから電話がない。倉庫のほうで
セットの設定をしているらしい。僕は雑誌等を読んで時間を過ごす。モリッツの家に行っ
たのは8時頃か皆で食卓を囲って、ビールを飲んだ。モリッツ、その彼女、カメラマン、
照明、そしてモデルの娘も来た。細い、北方系のなまりで喋るデンマーク人。ベルリンか
らだ。赤ワインが程よく回った所でスパゲッティーを食べた。菜食主義者だというモデル
も食べらるようにと、肉抜きのパスタであるが、オリーブオイルとニンニクが利いていて
おいしかった。隣のアパートにはモリッツの友人で仕事仲間のアレックスが住んでいて、
彼の所で僕は泊まる事になった。屋根裏の部屋はフローリング、黒い家具に最新のコン
ピューター、いかにもメディアに勤める人の部屋だったが、本人はいなかった。

監督のモリッツとその彼女が朝食を用意してくれていた。できたてのパンもパン屋から
買ってきてくれていた。そして倉庫へ向かう。モリッツは飛ばす。信号を3っつ無視、土
曜の午前中だから車は走っていないが、彼の走りはどちらかと言うとイタリア的だった。
あまりにも豪快なのでちょっと言ってみた、すると彼は気がついていなかったらしい。急
カーブを切って倉庫街へと飛ばす。モリッツはプロデュサーから、運転手まで全て兼任し
ているためストレスでぶっちぎれたのか、それとも小さな事には左右されない偉大なる人
物なのかもしれない。しかし、赤信号は然程小さな事とも思えないのだが....

ライン川程の幅を持った運河の前の倉庫はしまっていた。船からの荷物の積み替えをする
クレーンが錆びて立っている。もう何10年も使われていないようだ。寒い。4月初旬の
川から吹き上がる風は寒い。運河を覗く、水面まで8メートルぐらいか。今は引き潮なの
かもしれない。倉庫の門が一時間ぐらい待ちぼうけをくらってからあいた。これからセッ
トの運び込みだ。重いがいい朝練だ。倉庫の中は腐食したピスタシオ・オイルの匂いが鼻
を刺す。一日中ここで撮影。参ったな。ここは比較的安く借りれたのと天井が高いため大
きなブルースクリーンが簡単に設置できる。モリッツはディジタル人間でバックグラウン
ドの映像を全てCGで製作すると言う。彼はロード・オブ・ザ・リングスの製作スタッフ
に参加しないかと誘われた程の腕前らしい。ちょうど当時インターネット・ブームでCG
の責任者にならないかという誘惑に負け、映画の話は蹴ったという。しかし、そのイ
ンターネット会社はバブル現象の一環であった事に気がついたのは経営工学の友人がイン
ターンとして同会社でアルバイトをし、会社の経理を調べた時だったと言う。二人共同時
に退社し、その会社は半年後に潰れたという。

セットにいる人に挨拶をする。ところでどなたですか。いやあ、アレックスだよ、君は昨
夜僕のアパートで泊まったんだよ。ア、なるほどそれはお世話になりました。確かに真夜
中に誰かが帰ってきた音がした。勝手に上がった部屋で寝ていたのは僕のほうでした。
さて、僕はサラリーマンの格好でシーンを撮る。その後なんと2時間もメークに入り、髪の毛を
ジェルでハリネズミのように固め上げた。疲れた。待ち時間が異常に長かったが、エキス
トラの人々はスポンサーであるフーチュというアルコール飲料を飲みながら運河の辺で日
向ぼっこし、ご機嫌だった。僕も普段は台詞を繰り返しながら落ち着かないのだが、今回
のシーンには台詞があるわけでもなく楽だった。ソファに座っていればいいだけだ。長引
くと照明にゆであげられ疲れる。

10時には全て終了。帰って食事をした。モリッツ監督の隣人アレックスの部屋はその晩
にはもう予約者がいた。彼女がきていてその晩はスタッフ、カメラ、照明、役者はモリッ
ツ監督のアパートで雑魚寝状態だった。翌日中近東系のパン屋で食事をしてから僕はまた
ICE列車に乗り込みダルムシュタットへと向かった。

homepage