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マインツ大学脚本ゼミ

シルビー・パジェーというマインツ大学の脚本教授から電話があった。今度脚本ゼミを開くの
で役者として参加してくれないかという話がきた。参加者がゼミで書き上げた脚本を演出
し、撮影、ショートフィルムを製作するという内容だ。シルビーは前に僕が主演したマイ
ンツ大学学生のショート「寿司ディナー」の上映会に来ていて、そこで話をした事があ
る。

生徒は6人。金曜日の夕方から集まり、2チームに分かれて、脚本を書く。映画専攻の生徒ば
かりだ。あとベルリンから相手役の女優さんが来ていた。シルビーの昔からの友人らし
い。僕が行ったのは土曜日の午前中。朝ご飯に合流した。場所はマインツからラインを
下った山の中。エッケンロートという山頂にある村だ。ここにはマデレイン・リーンハー
ドという女優さんが住んでいて、彼女が映画産業の新人達の研修にと家を提供している。
彼女自身庭の向こう隣りの家に住んでいる。家はドイツの古い建築を新しく立て直した物
で大変美しい。一階の食堂で皆朝食を取っていた。男二人、女子4人、女優にシルビー。
朝のパンを食べてノンビリと11時から昨夜2チームが書いた脚本のプレゼンを聞いた。
ストーリーボードまで作り上げていた1チーム。1チームのミハエルは大学入学前に3年
近く、映画産業で働いていた事があり、かなりベテランだ。シモネも2年の経験を経てか
ら入学した。一番若いアンナが発表。これを皆で分析、ディスカスする。筋は通ってい
て、ストーリーに流れがある。彼らが撮影の準備をしている間に我々役者はシルビーと脚
本のリハをする。シーンを無言で通してみたり、棒読みで演技最小限にしたり、僕は自分
のパートを日本語で演じてみたり、色んな試みをして、シーンの多様性を研究。脚本教授
とシーンを通すのは中々面白い。普段映画の撮影などだと、監督さん達も忙しく、実験的
アプローチをとる余裕がないからだ。

近くの飲み屋の一室を撮影用に借りていた。そこをレストラン風にアレンジ、ライト、カメラ
の設定をした。限られたスペースと道具でいかに部屋を設定するかが、問題だ。匙を投げ
たくなるような条件だが、限られた道具だけで、考えて何回もアレンジしなおし、最終
セットに至った。机の移動等をした。夕方の5時頃から撮影を開始しした。ミハエルはカ
メラマン、アンナはエンジェルの羽を製作、シモネはライトを2チームのアルヨシャと設
定。3分のショートフィルムの脚本を3人で書いて、翌日に撮影という過酷なスケジュー
ルだが、なかなか皆妥協しない。照明もかなり緻密にセット。暖かい、シーンに相応しい
光を出すのが困難だった。ショットもアップから全体像まで、本場のテレビ撮影と退けを
取らない勢いでこなして行く。相手役のザビーネとも午後にかなり練習をしたので呼吸の
合った演技がかなり速やかにできた。撮影終了したのは夜の12時。最後のダンスシーン
は翌日の日没後に撮る事にした。

2つのグループの脚本はストーリーがはっきりしていなかった。エンディングも二通りあり、
どちらもシーンをなごやかに解く物ではなかった。これには役者、脚本教授、参加者がお
おいに審議した。3分ショートフィルムでは最初の20秒で状況把握できなくてはいけな
い、聴衆にある程度の期待感を持たせなくてはいけないなどと、多様な案が出た。役者か
ら見た場合、キャラクターがどういう意思を持っているか等、それがないと演じるに演じ
られない等と。もう一つのグループには映画産業の経験者がいない。高校卒業後直接大学
というパターンの学生ばかりだ。ローラ、アンケにアルヨシャ。アルヨシャは照明に詳し
い。彼は照明のアシスタント経験が半年あるらしい。皆で分析し、ああだ、こうだと議論
し、何故彼らが意図しているシーンが聴衆に通じるか、通じないかを解析、改良、実験す
る。いくつかのパターンを我々が彼らの前で演じてみる。その後、我々は1グループの撮
影に消えたが、シルビーは2グループと1チームを行き来した。夕方にはそれでも脚本は
形を成してきた。ストリー・ボードも出来上がり、明日には撮影がおこなえそうだった。
ローラとアンケは他のグループの撮影現場で夜中まで脚本を書き換えていた。

先日の夜は朝4時までビデオを見ていたらしい。ミハエル、アルヨシャとアンナが頑張ったら
しい。今晩はビーイング・ジョン・マルコビッチを見る事にした。というのは、何故か二
人の男は見ていないと言うのだ。映画好きが見ていないのは良くないと薦めた。いずれに
せよ見始めたのが夜の2時で僕は最初から最後まで見るつもりはなかった。最後まで見た
のはミハエルとアルヨシャ。しかし、彼等は翌日一番に朝食の机に座っていた。彼らは映
画産業の最低条件を満たしていた。睡眠のいらない男達。ノンビリと朝食を取ると何故か
11時が迫っていた。9時から朝食を取っているに、女子が皆揃うまでに30分が経った
のと、(脚本教授のシルビーが一番の寝坊。彼女ノッポで細く、髪の毛が天然パーマで、
寝起きの状態だとひどくぼさぼさだ。)1グループはカメラを持って外部で撮影をし、2
グループはセットをアレンジに出かけた。僕は相手とシーンの練習をし、撮影に入っ
た。2グループはこれと言った経験者がいないため、リーダー格が欠けていて、民主主義
なのは良かったが、なかなか物事が決まらない。彼らはシルビーに注意されたが、デモク
ラシーは崩れる事はなかった。それでも6時前に撮影終了、部屋を片付ける。1チームが
最終シーンののダンスを練習し(ダンスクラスを受けた効果が初めて出た。)、外でシー
ンを撮影無事コースを終了。最後に宿舎に戻り、皆で赤ワインで乾杯。(シルビーはワイ
ン好き。)皆が感想を述べて、解散した。

彼等が編集する際には是非参加したいと思っている。自分では脚本も書き、演技もするが、今
まで、たった一回しか、編集をした事がない。かなり楽しみである。

撮影現場グループ1

皆で朝食

撮影現場グループ2